宗教への関心がうすい傾向にある日本人は、国際結婚で宗教に関する問題に直面することが少なくありません。結婚を機に相手の宗教に改宗する?しなきゃいけない?子供の宗教はどうする?
今回は我が家の例をもとに、国際結婚家庭の子供の宗教について書いてみました。
家族の宗教観
ゴロリパパはキリスト教家庭出身
カメルーン人のゴロリパパはカトリック教徒です。カメルーンはキリスト教とイスラム教が大多数を占めていて、キリスト教の中でもカトリックが半数以上です。なので、ゴロリパパはカメルーンの中でも一番信者人口が多い宗教に属していることになります。
カメルーンのキリスト教にはカトリックとプロテスタントがあり、実は、ゴロリパパのお母さんはプロテスタントの牧師さん。冠婚葬祭などの際にお祈りをしたり、バイブルスタディーを主催したりと普及にも熱心な方です。結婚する時には聖書を渡され「困ったことがあったらこれを読みなさい。解決策が全部書いてあるから」と祝福してくれました。
家父長制のカメルーンでは、女性がいくら牧師でも男性側の宗教が子供に受け継がれます。そのため、ゴロリパパ含め5人の子供全員がカトリックだそうです。
カトリックとプロテスタントでは細かいところが異なるんでしょうが、お父さんもお母さんもとても穏やかな性格のため、宗教をめぐっての争いはないそうです。毎日お祈りと聖書を読む習慣を欠かさないお母さん、日曜日にはカトリックの教会へ出掛けて行くお父さん。その間で育ったゴロリパパは、穏やかにキリスト教を信仰しつつ、たまに教会へ行ったり困ったときには聖書を読んだりしています。
Momiは受け入れ型
一方、日本の田舎で育ったMomiは仏教神道がベースの受け入れ型です。お正月には神社へお参りし、クリスマスにはクリスマスツリーを飾ってケーキを食べてプレゼントをもらったりあげたりする。実家には神棚と仏壇が同じ部屋にありました。
まだ小学生くらいの時には近所の日曜学校にもたまに通っていました。キリスト教に興味があったというより、日曜学校で出されるお菓子が目当てでした。聖書も読んだりしていましたが、内容は全く覚えていません。
その後、アメリカへ留学した際にはキリスト教ルター派の大学へ進学しました。選んだ学校がたまたまルター派の大学だったというだけで、特に宗教を重視したわけではありません。キリスト学校のため大学一、二年時には特にキリスト教について学ぶクラスが必須で、基礎知識が無いMomiにとっては、神様について書く論文がものすごく大変でした。結局改宗はせず、非キリスト教徒のままで聖歌隊のクラスを取ったり学校付属のチャペルでの礼拝に参加したりして自由にしていました。改宗するほど興味は無いけど、プロテスタントの自由な感じやみんなで聖歌を歌うという雰囲気は好きでした。
日本に戻ってしばらくしてからカメルーン人のゴロリパパと結婚します。結婚式は人前式でした。教会で式を挙げるという選択肢ももちろんあったんですが、キリスト教徒でもない私がおこがましい・・と思ってしまい、みんなの前で誓い合うという形にしました。
これまでの人生で二回宗教に頼りたくなったことがありました。一回目は兄が亡くなった時、二回目は離婚した時です。心が弱っている時には宗教に頼りたくなるというのを実感しました。何か信じる者があればこの状況を肯定的にとらえられるのかも・・と、仏教、キリスト教、ユダヤ教と当時はいろんな宗教に関する本を読みました。そこで学んだのはどの宗教も結局同じことを言い方を変えて言っているということ(ざっくりすぎて怒られそうですが)。そして、自分にはやはり仏教の流れに身を任せる的な考えが一番合っているなということでした。今は心も落ち着き、もとの受け入れ型に戻っています。
バイリンガル聖書・新約
このバイリンガル聖書は、ゴロリのパパと結婚した時に自分で聖書を読んでみようと購入したものです。今でも手元に置いてあります。聖書の独特な日本語訳はどうしても抵抗があるんですが、なぜか英語だと物語のように読めて頭に入ってきます。パートナーの方が英語圏&キリスト教の方におすすめです。世界で一番読まれている本ですからね。英語の勉強にもなって一石二鳥です。
これまでのゴロリの環境と宗教との関わり
2020年現在、多宗教の国シンガポールに暮らしていることもあり、ゴロリの宗教への関心がかなり強くなってきています。どうしてイスラム教徒の人は豚肉を食べないの?どうしてお寺にお参りに行くの?イエス様はどうして死んじゃったの?どうしてどうして?といろいろ疑問が沸いています。私はどの宗教についての知識も中途半端なので、それぞれの宗教については実際にその宗教を信じている方達に教えてもらうようにしています。
ゴロリ誕生から2歳頃@日本
ゴロリのパパはカトリック、ママのMomiは受け入れ型。離婚時にはMomiが精神的に弱って教会へ通ったりしたこともありましたが、結局は改宗せずで現在に至っております。ちなみに通っていたのはバプテスト教会。牧師さんがギターを弾きながら熱唱するようなところです。歌と踊りが大好きなゴロリは楽しんで通っていました。
ゴロリ2歳から4歳頃@日本
ゴロリが日本で2歳から4歳まで二年間通った保育園はカトリック教会付属のモンテッソーリ保育園でした。食事の前にお祈りしたり、園でいただくお誕生日カードにマリア様のイラストが書かれていたりしましたが、特に宗教色が濃いとは感じませんでした。
ゴロリ4歳以降@シンガポール
シンガポールへ移ってからは身近に宗教をすごく感じるようになりました。シンガポールは中華系・マレー系・インド系等の人種が入り混じって住んでおり、仏教・イスラム教・ヒンドゥー教・キリスト教と宗教も様々です。お寺の横にモスクや教会がある光景は、シンガポールの多様性を本当に良く象徴しています。
シンガポールの家には住み込みのお手伝いさんがいて、彼女はイスラム教徒のインドネシア人です。豚肉は食べず、アルコールももちろん飲みません。イスラム教徒女性の服装(ヒジャブ)はしていませんが、日に五回のお祈りの際には白い衣装に着替えてお祈りしています。お休みの日には彼女にモスクへ連れて行ってもらったりしてイスラム教について教えてもらったりもします。毎年ハリラヤと呼ばれる時期には約一か月絶食期間もあります(実際は日が昇っている時には食べ物や水分を一切口にしないというもの)。
ゴロリが通っているシンガポールのローカル幼稚園はプロテスタント系の教会付属の園です。なぜか歴代キリスト教の園へ通うことになりましたが、特に宗教を意識して園選びをしたわけではありません。日本のカトリックの園と比較すると宗教色はかなり濃く、毎日のように聖歌を歌って踊り、週に一回は聖書のストーリーの読み聞かせがあります。楽しい雰囲気で通えているので問題ありませんが、「God created us!(神様が私たちを創ったんだよ!)」と考え方がキリスト教よりになってきてはいます。
今後のゴロリの宗教はどうなっていく?
ゴロリは、日本とシンガポールにてこれまでにいろいろな宗教に触れてきていますが、やはり毎日通う園での影響が大きいので、キリスト教的な考えをベースに他の宗教を学んでいくと思われます。
現在は、家の中には無宗教のMomiとイスラム教徒のお手伝いさんとキリスト教寄りのゴロリが3人で生活しているという状態です。さらにはMomiの同僚が敬虔な仏教徒、お友達の外国人家庭はほとんどがキリスト教徒、イスラム教徒やヒンドゥー教徒のお友達家族とも遊ぶような環境で、毎日が多様性を受け入れる練習のような感じですね。
私はひとつの宗教にこだわらずに今まできましたが、ゴロリが何らかの宗教を持つことには特に反対はしません。何か信じる者があった方が辛い時を乗り越える支えになってくれると思いますし、何かを深く信じられるというのは幸せなことだと思うからです。
国際結婚家庭の宗教問題あるある
日本人は神道や仏教が習慣の一部のようになっていて、宗教というよりも道徳やしつけの意味合いが強いですよね。「宗教は何?」と聞かれると大抵の日本人は「無宗教」と答えるそうです。実際にわたしもそういう風に答えていました。「何を信じているの?」と聞かれると「自分」と。これは世界的に見ても不思議な答えみたいですよ。
世界のほとんどが何かしらの宗教を信仰している中で、日本人と外国人との国際結婚では宗教がらみの問題も少なくありません。
日本人は無宗教だから配偶者の宗教に合わせなきゃダメ?
例えばイスラム教は異教徒との結婚を禁じているため、無宗教のままではイスラム教徒の方と結婚ができません。これは、イスラム教が生活の中に深く入り込んでおり、宗教が異なることでトラブルが起きやすいためです
※イスラム教徒の男性が結婚する場合、お相手の女性はキリスト教、イスラム教、ユダヤ教徒のいずれかであれば結婚することができます。日本人のように「無宗教です」はNGです。イスラム教徒の女性はイスラム教徒の男性とのみ結婚が許されています。
他の宗教ではゴロリパパの両親の例にある通り異なる宗教・宗派でも受け入れてくれるようですが、お相手のご家族が信心深い家庭だと、宗教が一致していないことで結婚を反対されるということもあるようです。これから家族として一緒に暮らしていくことを考え、相手を理解する意味でもお相手家族の宗教について勉強してみるのは必要かもしれません。
国際結婚をした友人で、実際に「キリスト教に改宗した」「イスラム教に改宗した」という方も何人かいらっしゃいます。みなさん口をそろえて「好きになった相手のことを知りたいと相手の宗教について勉強するうちに自分の中でしっくりくるものがあった」とおっしゃっていました。自分が納得し、考えを共有する形で相手に近づけるというのは理想ですね。
火葬か?土葬か?
普段の生活をしていく中では宗教の違いというのはあまり感じることが無いかもしれません。ゴロリパパと暮らしていた中でも特に不都合はありませんでした。ただ、ちょっと心配だなと感じていたのが、死んだ後のことです。
日本では遺体を火葬するのが一般的ですが、キリスト教のゴロリパパは土葬を切望していました。実際に日本在住のカメルーン人が日本で亡くなった際には、みんなでお金を出し合って遺体をカメルーンに運んだというのも何度か聞いたことがあります。日本人の友人とこの話をした時に「まだ二人とも若いのにもう死んだ時のことを話すの??」と呆れられましたが、国際結婚家庭にとっては至極重要なトピックであると同時に、結婚を考えた時点から話し合っておくべき事項だと個人的には思います。
男の子が生まれた!割礼はする?しない?
日本在住の国際結婚の家庭で、どちらかがユダヤ教、イスラム教、キリスト教の場合には男の子が生まれると割礼問題で悩むことが多いようです。そもそも割礼をするのかしないのかというところですが、割礼は宗教的な理由と医療的な理由の両方で行われる場合があり、以前よりも乳児・幼児期に親の独断で割礼を行うという割合が少なくなってきています。これは、割礼先進国のアメリカで1998年に「割礼を医療用の理由で推奨することをやめた」ことが影響しています。
手術ですから、体への負担やリスクもあります。割礼が一般的ではない日本人家庭からきた私たちには子供にとってどうしてあげるのが一番いいのかは悩みどころですよね。国際結婚家庭の方何人かにうかがいましたが、割礼の最終決定については各家庭とも父親の意見を優先していました。
割礼を行おうとなった場合、日本ではそもそも割礼を行っている病院が少ないので、かかりつけの病院で探して紹介してもらうというのも良いかもしれません。乳児・幼児だと7万円くらいが費用の目安のようです。
まとめ
ゴロリパパとMomiがまだ結婚していた当時、宗教の話が会話に出てくることがたまにありました。ゴロリパパは押し付けるタイプの人ではないので、自分の宗教への改宗を迫ったりは無かったのですが、お互い同じ宗教だともっとスムーズに行くのかなと感じたことはありました。
私はアニミズム的な考え方はあるものの、祈りの対象としての神様という存在を受け入れることが出来ませんでした。今でも宗教を深く信じている人をうらやましいなと感じることはあります。
ゴロリには子供のころから多様な宗教観に触れさせることで、最終的に自分の考えに一番しっくりくるものを選択してもらいたいなと思います
最後までお読みいただきありがとうございました!
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